五感に響く、言の葉。

小説の世界を肌で感じる旅、白駒の池と苔の森

 

10月のパッとしない空模様の日、

娘をつれて夜明け前から車を走らせること3時間。

出迎えてくれたのは駐車場を待つ長い車の列と、霧で覆われた幻想的な原生林だった。

 

長野県北八ヶ岳の原生林。身ぶるいするほどの冷気と潤った空気は、

霧の発生に申し分のない条件だろう。

駐車場からすぐのところに「白駒の池」入り口がある。

白駒池は標高2,100m超えの高地にある天然湖としては日本最大の湖だ。

入り口に一歩足を踏みいれると、あたり一面に緑のジュウタンが広がる。

神秘の世界への入り口だった。

485種類の苔が生息する原生林は、樹齢数百年の木々が自然のまま残っている。

まさに神の領域だ。

 

 

『ジブリの世界を体感』

マイナスイオンたっぷりの空気に癒されながら木の散策道を進むと、

ほどなく湖がみえてくる。

紅葉はまっさかり。

静かな水面に映る紅と黄が目にまぶしい。

苔の森には「カモシカの森」や「オコジョの森」「ヤマネの森」など、

ワクワクするネーミングのついた森が10ヶ所ある。

なかでも気になったのが「もののけの森」。

ジブリ映画ファンの私にはたまらないネーミングだ。

木々の間から降ってきた光が静寂に包まれた森を照らし、精霊の「コダマ」たちがひっそりとこちらをみている「もののけ姫」のワンシーンを想起させる森だった。

 

 

『天使が降り立つ地』

カメラを握る手がかじかむほど冷たくなったころ、山小屋「青苔荘」に到着した。

パッと目にはいった看板の”豚汁”という二文字に、娘は一直線。

私はキノコ汁をいただき、からだの芯から温まったところで近くにみつけた桟橋へ向かった。

彩り豊かな紅葉に囲まれた湖に目を奪われていたら

急にふわ〜っと霧が立ち込めてきた。

鮮やかな世界が一瞬にしてモノクロの世界となり、

まるで天使が舞い降りてきたように幻想的な世界が広がった。

 

 

 

『生かされていることを実感できる旅』

小説の世界が目の前で現実になった

そんな不思議な感覚が最初から最後まである旅だった。

 

原生林という人間の手が入っていない森には、

森自身が守ってきた生態系があり人はそれを簡単に侵してはならない。

心とからだを癒してくれる森に入ると、自分は「生かされている」と、感じる。

生命を感じる旅は、私にとって特別な旅だ。