そこは、生命をはぐくむ神秘の地。
沖縄の古びた町並みをぬけてたどりついたのは、南部の東海岸にたたずむ「百名伽藍」。
車窓にうつる瑠璃色の海とおだやかな風、生命をはぐくむ神秘の地のはじまり。
ザワザワと雑踏の東京を脱出してついたのは、南国特有の心地いい風が舞い、ココナッツのようにあまく香る那覇空港。
空港から30分ぐらい車を走らせてたずねたのは、南部の東海岸にポツンとたたずむ「百名伽藍」。旅の目的地だ。
「百名」とは、沖縄の豊かな自然がのこる琉球創世神話の舞台としてしられる神秘の地。
「伽藍」は寺院を意味し、「百名伽藍」の隠れたテーマは「禅」。
そう、ここは”すべてを削ぎ落として無になる“禅の精神”がやどり体感できる場でもある。
そんな神秘の地で、大きな期待感と小さな緊張感をおぼえながら「百名伽藍」に足をふみいれた。
『海と寄り添い、心と寄り添い、自分を再意識』
まるで“海の道”のようなロビーへつづく海沿いの長い廊下をぬけると、1杯の水をもったスタッフが「おかえりなさい」と、開放感あふれたロビーで心待ちにしていた。海風にゆれる光と香り、波の音をききながら1杯の水を飲むと、体のなかの余計なものが浄化された気分になる。
人間本来の五感や感性がよびおこされ、本来の自分と語り合う静の場所だとも再認識できる。
まさに一杯の水は魔法の水である。
海辺の隠れ家のようにたたずむ部屋は、日の動きにあわせて刻々と海の色彩を楽しませてくれたり、空にとどきそうな岸壁に建つ露天風呂に入っていると、時を忘れて眺めていたり。
すべては海とつながっている。
『豊穣な海のパワーと温もりを味わう、食の快楽』
百名の海は、地元の人が「海の畑」とも呼ぶほど豊穣だ。この海でしか味わえない新鮮な魚介や海藻、さらにミネラルが豊富な海水を蒸留して育てられた野菜は、素材本来のみずみずしさと濃い味わいのなかにほんのりあまい、唯一無二の野菜だと驚くほどだ。
おいしい余韻をかみしめていると「お食事で元気でました?この野菜は私たちが育てています」と、ひとりのスタッフがいう。
「百名伽藍は私たちの家で、お客さまは家に招いた旅人です。私たちが居心地いい、おいしいと感じるものだけで、もてなしています」とも。
丹精こめて育てたこだわりの食材に伝統的な調理法でつくられた料理は、しみじみおいしく、ひとくち食べるごとに体がよろこびを感じるようだった。
『原風景に出逢える特別な旅』
「百名伽藍」での出逢は、昔をなつかしむような心の奥底にある“原風景”ともいえるかもしれない。
神秘的な自然が古くから受け継がれてきた土地で、地元の暮らしと同じようにもてなされる。
“海の道”からはじまる「百名伽藍」は、生きる原点を教えてくれる。
それは人生を変えるほどの特別な旅だ。