五感に響く、言の葉。

自分が楽しくて運営しているvo.2<ギャラリーオーナー 木村和子さんインタビュー>

 

素晴らしい作品を紹介したいという気持ちは、作品に宿る「人の想い」

代官山で10年以上育ててこられた木村さんが営むギャラリーの真骨頂とは?

さらにお話を伺いました。

 

ーやめようと思ったことはありますか?

プライベートとの両立の中でやめた方がいいかなと思ったことはあったけれど、ギャラリーを運営している中で嫌な思いをしてやめたいと思ったことなどはまったくなくて。

やめた方がいいかなと思ったときも、ずっと気にかけてくださっている方がサポートしてくれたから続けられているのだと思う。

本当に感謝しかないですね。

それと誰しも適正不適性があって、自分にとって何が不適性かわかっていれば適正である人を探せばいいだけだからね。それはギャラリーに限ったことではなく、人生すべてにおいていえますよね。

今はSNSの時代だけど、私は苦手だからギャラリーを通して知り合った方で得意な方にお願いしてやっていただいてる。

外にでていろいろなギャラリーを見てそこにいる方々に声をかけ、それがきっかけで声をかけた人同士が繋がって、今は本当にその輪がとても大きくなっています。ちょっと足を運ぶのが億劫だと思っても何か気になりいってみると、そんなときこそ繋がりが生まれるのね。

このギャラリーで繋がっていく人の輪を見ていられるから、続けてこられたのだと思います。

 

ースローガン通りになっていらっしゃいますね。

そうね、ちょうどいいスローガンを掲げていたのね(笑)

でも、アートが好きというより人が好きなのだと思います。

きっと、ギャラリーじゃなかったとしても結局は人の輪がつながることを目的としていたんじゃないかな。アートそのものも好きだけれど、作品に携わっている人そのものが好きなのでしょうね。

どんなジャンルのアーティストでも、ものすごいエネルギーを注ぎ込んで作品を作っていくわけじゃない。最初のうちは気がつかなかったけれど、年齢も性別も関係なく様々なエネルギーがあるからいい。

ここにきてくださった方がいい”気”を落としてくださっているのよね。

だから、ふらっといらした方が「ここなんか居心地いいですよね」なんていってくださるとすごく嬉しいし、それはきてくださった方々のおかげなのだと思います。

このギャラリーはいらした方の滞在時間が他のギャラリーと比べるとわりと長いように感じるの。多くの方がゆっくり見ていってくださるから、作家さんも嬉しいし、それは私がいようといまいと関係なく作家さんからもよく伺います。

 

 

ーここは作家さんと近くなれる印象がありますよね。話しかけやすい空気感というか。

ギャラリーを始めて木村さんご自身に変化はありましたか?

そうね、ますます好奇心が強くなったとか(笑)。

あと、年齢的なこともあるかもしれないけれど、よく身の上相談されることがあります。よく伺うのが、作品と仕事の両立というかバランスについてかな。作家さんは生計が立てられるくらい売りたいしファンを増やしたい。しかし、作家さんは作品作りで精一杯。マネージャーが付いていればよいけれど、なかなかそこまでは簡単にはいかない。

そんなお悩みを抱えた作家さんは、たくさんいらっしゃいます。

それなら展示の回数をふやし、DMをいろいろなギャラリーに自分の足で回って配る労を惜しまないのが大事なように思います。ギャラリーのオーナーも作家さんと対することで作家さんの人格が伝わり、他のギャラリーで展示している時も応援したくなるのですね。

地道な努力を惜しまないことがファンを増やすひとつの道のように感じます。

アドバイスをするというより、聴くことで作家さんの抱える悩みと直面しているのでしょうね。

運営をしている人間なので、作家さんの想いを知ることは運営においても参考になるし、人を介して自分を客観的に見るようにもなったりして。

それが昔の私にはなかったように思います。

 

ーギャラリーを続ける中でこだわっている点は何かありますか?

展示する方も見にきてくださった方も「ここに展示して(見にきて)良かったなあ」と満足してくださることかな。

 

ーどうしたら満足してくださるのでしょう。

「どうしたら満足していただけるか」は考えてないですね。

ただ、私は自分が楽しくて運営しているから、いってみれば自分が楽しいという気持ちがここにきてくださった方にも伝わると満足に繋がるんじゃないかなあ。

最初の頃は必死にそろばんを弾いてなんとかしなきゃって思っていたけれど、だんだんと気持ちにゆとりがでてきて自分ももっと楽しみたいと思うようになって、それが続けていられる要因のひとつかも知れないですね。

 

 

ー仕事で迷いがあるときはどうしていますか?

迷ったときはとことん迷って、そしてしないかな。

そもそも迷う性格ではないから、迷うという時点でダメなんだと思っちゃう。

なのでいいと思ったら直感でやってしまうし、だけれど柄になく迷うときはNOというサインだと思ってやらない。それを無理してやると、きっとストレスがたまるんじゃないかなと思います。

迷わないのではなくね、迷うことはたくさんあるのですよ。

でも迷って決められないときはやらない。

迷ったときはどちらにするか先に決めておくと楽になれるかも知れないですね。

 

ー迷ってもGOするときの決め手は?

私は書き出します。

迷った事柄をやった場合とやらなかった場合のメリットデメリットを紙に書く。そうしてメリットの方を見ているうちにGOが決まるのです。

普段は書き出したりしないから、逆に書いてみると客観的に見られるみたい。

すると自分が出した選択に安心できるんですよね。

例えばこのギャラリーを更新するか迷ったときは、ここがなくなったら自分はどうなるかを考える。ここがなくなったら「私はだめだ、寂しい」と思ったら多少大変なことがあっても「よし続けよう」ってなりますね。そして続けることになったら急に自分が軽くなって、いろいろなことが考えられるようになる。いろいろな案がでてくるようになって、自分の選択に自信を持つのね。

するとまたちょっと考えていたアイデアに向けて、それこそ何もしなければ何も始まらないからまずはちょっとやってみようかなと思って人にいう。

そしてことばにすると周りの方が協力してくださったりするんです。

 

ーそれは素晴らしい連鎖ですね!ストレス解消法は?

自分の好きなことをする。

何をやっているときが一番楽しいかわかっていれば解消できますよね。

ストレスがたまるのって何が楽しいのかわかっていないケースが多いのではないかな。

もちろん自分ではどうすることもできない事象も生きていればあると思うけれど、できるときは自分が好きなものを見つけておくと気分が軽くなるように思います。

 

ーこれからの夢や目標はありますか?

東南アジア進出!。

近いから自分も作家さんもいきやすいですからね。

 

<インタビューを終えて>

無理に集客しないし、去るものも追わない。

でも、人はどんどん集まってくる。

作品の見方は人それぞれ異なるけれど、木村さんは作家に寄り添い作品の内側に宿る『作家の魂』を感じているのだろう。

作家との触れ合いが、作家そのものの成長にも寄与しているように思う。

ギャラリーが人を惹きつける魅力は、木村さんが本質に寄り添うことを大切にしているからではないだろうか。

それも自然体に。

 

木村さんの芯は揺るぎないのに、しなやかだ。

大海原を駆け巡るようにしなやかに動く芯は決して折れることがない。

折れそうになれば、折れないように周りの人が支えてくれる。

本来、人と人との繋がりはそうやって支え合うことでできているのだと、

木村さんのインタビューを通して改めて感じた。

木村さんの心のコップは、ご自身が好きなもの以上に「ご自身の好きな人が好きなもの」で満たされている。そうして満たされたコップが増えるほどに、木村さんの喜びも膨らんでいっているように思う。

 

現代のコミュニケーションでは「疲れる」ということばをよく耳にする。

コミュニケーションの原点は木村さんのように「自分がいかに楽しめるか」なのかも知れない。

もしあなたがコミュニケーションに悩んでいたら、まずは自分の気持ちに素直になってみる。もしかしたらほんのちょっとの気持ちのあり方で、人を見る気持ちにも変化が生まれるかも知れません。

 

ほっと一息、ギャラリー散歩で心を和ごませてみてはいかがでしょう。

 

spaceK 代官山

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